B 1-1 睡眠呼吸障害患者における無呼吸指数と食道内圧
○渡辺琢也1、三上章良1、本西正道2、本多秀治2、京谷京子2、漆葉成彦2、寺島喜代治2、手島愛雄2、杉田義郎1、武田雅俊2
1)大阪大学健康体育部健康医学第三部門、2)大阪大学医学部精神医学教室
 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の病態生理において、無呼吸による低酸素血症や微小覚醒による睡 眠の分断と並んで、呼吸努力による胸腔内圧の低下が重要視されている。また近年、無呼吸や低酸素血症 を呈さず、呼吸努力の増大に伴う覚醒反応で睡眠が分断され、日中の眠気などの臨床症状を生じる上気道 抵抗症候群(UARS)なども注目されており、睡眠呼吸障害(SDB)における呼吸努力に伴う胸腔内圧の低下 の評価の重要性は増大している。しかし、一般的な睡眠ポリグラフには、胸腔内圧低下を反映する食道内 圧(Pes)測定は含まれず、SDBの重症度判定は無呼吸指数(AI)あるいは無呼吸低呼吸指数(AHI)が用いられ ており、胸腔内圧低下の指標は含まれない。我々はこれまでの本学会で、SDBのPesの変動パターンに は、陰圧の漸増に引き続いて微小覚醒を生じる場合や、無呼吸・低呼吸や微小覚醒を伴わず比較的長時間にわたって増大した陰圧が持続する場合などさまざまなものがみられ、軽症のOSASにおいては、AI, AHI では微小覚醒による睡眠分断を過小評価する場合があることなどを報告した。今回においては、UARSを 含むSDB患者で、従来の重症度評価の基準であるAI(及びAHI)とPes陰圧の増大との関連を検討した。
対象:大阪大学医学部附属病院神経科精神科でPes測定を含む終夜睡眠ポリグラフを行い、閉塞性の睡 眠呼吸障害と診断した患者15例(OSAS9例、UARS6例)。
方法:脳波頤筋電図眼球電図サーミスタによる呼吸曲線に加え、バルーンによる食道内圧測定を終夜にわたり行った。睡眠段階はRechtschaffen & Kalesの規準に準じ、10秒を1エポックとして判定し、10秒以上の呼吸停止を無呼吸、10秒以上の呼吸曲線の振幅の50%以上の減少を低呼吸とし、睡眠1時間当たりに換算してAIとAHIを算出した。また、ASDAの規準に従って微小覚醒の判定を行い、無呼 吸、低呼吸、鼾の増強およびPes陰圧の増大に伴う覚醒反応を呼吸関連の覚醒反応として、睡眠1時間当たりの呼吸関連覚醒反応指数(B-ArI)を算出した。Pesの指標としては、最大値Pes maxのほか、奇脈を起こすとされる-13.5cmH2O以上のPes陰圧の増大を示す1時間当たりの回数をPes>13.5indexとして表した。診断に当たっては、AI≧5をOSAS、AI<5でB-ArI≧10のものをUARSとした。
結果:今回の症例でのAI, AHIとPes低下の指標としたPes max, Pes>13.5indexは以下の通りである。
症例 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
AI 107.7 82.5 39.7 15.2 14.3 12.9 8.2 5.8 4.6 1.2 1.0 0.6 0.6 0.1 0.0
AHI 112.1 84.0 54.2 32.7 35.6 16.3 13.3 14.6 12.9 4.3 1.2 1.0 3.4 3.0 2.5
Pes max * 30.5 31.5 41.0** 41.0** 40.5 30.0 22.0 27.5 24.0 26.0 27.0 38.0 23.0 23.0
Pes>13.5
index * 299.3 97.1 839.8 214.0 330.8 * 12.9 58.1 125.8 129.0 1.4
320.4 116.1 2.8
   (*データ欠損、**測定範囲オーバー )
考察:無呼吸指数、無呼吸低換気指数は胸腔内圧低下の程度を反映せず、睡眠呼吸障害の重症度判定の基準としては不充分であり、胸腔内圧低下の指標が必要であると考える。
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