A-22 フルマゼニール投与がミダゾラム麻酔後の主観的眠気、作業能力および夜間睡眠内容の変化に与える影響
1)東京慈恵会医科大学精神医学講座、2)同麻酔科学教室、 3)東京慈恵会医科大学付属看護学校
○小曽根基裕1)、伊藤 洋1)、佐藤 幹1)、大淵敬太1)、林田健一1)、山寺 亘1)、大山栄作1)、佐々木三男3)、牛島定信1)、鳥海和弘2)、瀧浪将典2)、谷藤泰正2)
[ はじめに ]
 日帰り手術や検査の需要が増す昨今、麻酔後の精神生理機能の変化を検討することは、帰宅時間の決定やその際に患者へ与えるべき指示を明確にする意味からも重要である。また麻酔後の影響を早期に消退させることは、帰宅までの時間短縮や帰宅後の事故防止の意味からも重要である。
 今回我々は、健常男性被験者を対象に、ベンゾジアゼピン系静脈麻酔薬ミダゾラムを単回投与し、その回復過程における主観的眠気、疲労度、記憶、作業能力の経時的変化および当日夜の睡眠内容の変化を検討し、さらに麻酔終了時のベンゾジアゼピン拮抗薬フルマゼニール投与がその変化にどのような影響をもたらすかについても検討を行い、若干の知見を得たので報告する。

[ 対象と方法 ]
 対象は健常成人男性7名とした。実験はミダゾラム麻酔終了直後にフルマゼニール を投与したフルマゼニール期間と生理的食塩水3mlを投与したプラセボ期間とから構成され、両期間は1週間以上の間隔をあけ施行した。実験期間は各々麻酔前日22:00から麻酔施行翌日8:00までの3日間とした。麻酔は当大学内手術室内リカバリールームにて14:00にミダゾラム(0.1mg/kg)を留置カテーテルより10secで静脈内投与し麻酔導入した。投与後30分を麻酔終了とし、フルマゼニール0.3mgもしくは生理的食塩水3mlをシングルブラインド法にて静脈内投与した。
検査項目は以下の通りとした。
1)血中ミダゾラム濃度
投与開始後5min,15min,30min(麻酔終了時),50min(20min), 80min(50min), 110min(80min)に留置カテーテルから血液を採取し測定した。※()内は麻酔終了時点からの経過時間
2)ポリソムノグラフィー(PSG)
a.麻酔中脳波変化:麻酔開始から終了まで(14:00-14:30)測定し、データレコダーに記録した。
b. 夜間睡眠内容:麻酔前夜および麻酔当日夜に23:00から7:00まで睡眠をとらせて測定した。
3)ムードスケール、作業能力
以下のa.〜c.のムードスケールおよびPouli test(単純加算テスト)を麻酔前夜23:00,麻酔当日7:00,10:00,12:00,14:00(麻酔直前),麻酔終了後20min,50min,80min,210min(18:00), 330min(20:00), 510min(眠前23:00),麻酔翌日8:00に測定した。
a.主観的眠気:Stanford Sleepiness Scale (SSS)
b.主観的疲労度:Spaceaeromedicine fatigue Check list(SAM)
c.Visual analog scale: VAS(alert,sleepy, happy,sad,tense, calm, feel, tired)
4)記銘力テスト
5種類(国、車、花、食べ物、動物)の名前と4桁の数字のセットを麻酔前日23:00と麻酔直前(14:00)に2セット記憶させ、麻酔終了後20min, 50min, 80min, 210min(18:00), 330min, 510min(眠前),麻酔翌日8:00に再現させ正否を判定した。

[ 結果 ]
1)ミダゾラム血中濃度は、麻酔導入直後に両期間ともに200ng/ml以上を示し、(アネキセート期間229ng/ml、プラセボ期間200ng/ml)終了時でも100ng/ml以上を示した(アネキセート期間113ng/ml、プラセボ期間108ng/ml)。また全例において入眠したことが脳波上確認された。
2)麻酔終了後80minまでの主観的眠気、疲労度スコアーは、プラセボ期間において麻酔前値と比較して高値を示し、作業能力テスト(正解数)は低値を示した。またプラセボ期間と比較してフルマゼニール期間では、主観的眠気、疲労度スコアーは低値を、作業能力テスト(正解数)は高値を示し、フルマゼニール投与により早期に精神生理機能の回復が認められた。
3)麻酔終了後210min(18:00)の作業能力テスト(正解数)は、プラセボ期間において麻酔前値と比較して高値を示したが、フルマゼニール期間では同様の変化はみられなかった。この作業能力の上昇はミダゾラムの血中半減期が110minであることから、リバウンド現象との関係が示唆されるが、フルマゼニールの投与はこの現象を減衰させる可能性が示唆された。
当日は症例を7例に増やし、若干の考察を加える予定である。
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