W1-5 上気道抵抗症候群(upper airway resistance syndrome:UARS)
大阪大学健康体育部健康医学第三部門
三上 章良
1)従来の診断
 上気道抵抗症候群(UARS)は、1991年〜1993年にかけて、Guilleminaultらが提唱した症候群である。彼らは、日中過眠(EDS)があり特発性過眠症と診断されていた48名の患者に、食道内圧(Pes)の測定を含めたpolysomnographyを施行した。15名において、apnea / hypopnea(AH)はないが、呼吸努力によるPesの陰圧が漸増し、3〜14秒のEEG arousalが生じる現象がみられた。EEG arousalの直前には、従来のhypopneaの基準を満たさない平均22%の換気量の低下が3呼吸以内でみられたが、SpO2の低下はなかった。EEG arousalは睡眠1時間あたり10回以上(平均約30)で、治療としてnasal CPAPが有効であった。UARSとは「閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群の基準を満たさないが、Pes陰圧の漸増に伴うEEG arousal(Pes arousal)が頻回にみられ、EDSが生じる症候群」と考えられ、臨床的に見逃してはいけないことの重要性が強調された。その後同様の疾患の報告が多数みられるが、その診断基準は必ずしも明確でない。

2)American Academy of Sleep Medicine(AASM)のTask Forceの要旨
 当初、UARSは独立した症候群として検討されたが、obstructive sleep apnea-hypopnea syndrome(OSAHS)と病態生理が同様であるとの結論から、UARSはOSAHSに含まれることになった。その代りにAHを伴わないPes陰圧の漸増(持続時間10秒以上)による覚醒反応を新たにrespiratory effort-related arousal(RERA)と呼ぶ。AHをobstructive apnea / hypopnea event(OAHE)とし、hypopneaは、従来の基準(10秒以上続く、50%をこえる換気量の低下)に、「validateされた測定方法によるclearな換気量の低下が、たとえ50%以下であっても、10秒以上続き、3%を越えるSpO2の低下あるいはarousalを伴っているもの」を加えたものとしている。よって、従来のPes arousalの一部はOAHEに含まれ、残りがRERAとなる。OAHEとRERAの和をsleep related obstructive breathing events(SROBE)とし、その睡眠1時間あたりの回数(SROBE Index)をOSAHSの診断基準(5以上、ただしEDSなどの臨床症状が必要)および重症度判定(>15が中等症、>30が重症)に用いている。新しい診断基準によるOSAHSの中で、従来のUARSに相当するのは、睡眠1時間あたりのOAHEは5未満であるが、RERAを加えるとSROBE Indexが5以上になるものと考えられる。

3)AASMによるOSAHSの診断基準の問題点(UARSに関する点を中心に)
 我々は、以前からUARSを含めた閉塞性睡眠呼吸障害の重症度判定には3つの要素(睡眠分断,低酸素血症,胸腔内圧低下)が重要であり、特にUARSでは3つの要素の重症度が乖離するため、無呼吸低呼吸指数(AHI)のみでは、低酸素血症以外の睡眠分断と胸腔内圧低下の重症度評価が正確にはできないと報告してきた。AASMによるOSAHSの基準では、睡眠分断をひき起こす覚醒反応が重視されていることは評価できるが、逆にSROBE Indexによる重症度判定では、低酸素血症の重症度評価が不十分になる可能性がある。例えば、従来の判定によるAHIが0で睡眠1時間あたりのPes arousalが35の症例(従来のUARS)と、従来の判定によるAHIが35でPes arousalのない症例(SpO2の低下が頻回)とがともにSROBE Index 35で重症度が同じと判定されることになる。また、Pes arousalを重視してRERAという概念を作りながら、hypopneaの基準を拡大することで、従来のPes arousalの一部(あるいは、ほとんど)がSpO2の低下がないにもかかわらずhypopneaと判定される可能性がある。hypopneaの基準を拡大するのは、測定方法の簡便化・評価方法の統一化が目的かと推測するが、結果的にhypopneaとRERAの病態生理学的意義の相違が曖昧になってしまうように感じる。また、RERAの持続時間・arousalの判定の問題・snoringの記録に関する議論がなされていない点が不十分と考える。
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